元看護師で医療ライターの秋浦つなぐです。
さっそくですが病院から奨学金を借りようとしている看護学生さん、借りる前によく考えてほしいことがあります。
病院奨学金を借りるときに働いたら全額返済免除だけで決めようとしていませんか?
結論から言うと返済が免除になるまで勤める覚悟がない場合は、おすすめしません。
なぜなら病院からお金を借りることであなたが勤務先を選ぶ自由を制限されるからです。
一方で下記に該当する方は、奨学金返済免除以外の就職目的があるため、奨学金を借りてよかったと思えるでしょう。
・看護助手のアルバイトで働いていた病院に就職する
・奨学金返済免除以外にその病院へ就職する目的がある
・予め病院の内部事情をリサーチできている
当てはまらない看護学生さんは就職後の後悔を減らすためにも、病院から奨学金を借りるデメリットを知ってから決めると安心です。
この記事でわかること
病院から奨学金を借りるデメリット/メリット
病院が奨学金を貸してくれる目的
病院側から見た奨学金を貸すメリット
病院から奨学金を借りてもいいケース
この記事を読み終わるころには病院奨学金の仕組みを理解した上で、病院から奨学金を借りるか否かを決められることでしょう。
病院奨学金で損をする看護学生が知らないこと
病院とあなたに雇用とお金の契約が生まれる
病院から奨学金を借りることは、すなわち雇用とお金の契約が生まれるということです。
病院からお金を借りる契約と、病院で働く契約をそれぞれ結びます。
契約を結ぶと、何年か働いたら返済免除とい契約条件がついてくる病院奨学金もあるのです。
この時点で、就職後なにがあってもその病院で数年は働いて返済免除してほしいという心境へ導かれ、看護学生にとっては縛りとなり得ます。
就職後、順調にキャリアを積めればいいですが、人間関係や勤務体系、職場風土が築いている働く環境に馴染めるかどうかは就職してから分かることです。
精神を病みそうなことがあっても返済免除のためにその病院で働けるのか?
現実離れした想定と問いに思えても、実際ストレスから早期退職する看護師はいます。
病院から奨学金を借りると雇用とお金の契約が生まれる、すなわち就業年数と返済免除がセットになっていることを前提に考える必要があるのです。
病院以外から奨学金を借りるなら公的機関がある
病院以外では公的機関から奨学金を借りることができます。
奨学金を貸してくれる公的機関の一例
病院奨学金と公的機関の奨学金制度のちがいは、雇用関係の有無にあります。
下記の図を見てください。
左は病院奨学金のイメージ、右は公的機関から借りる奨学金のイメージです。
このように病院奨学金には雇用関係があり、公的機関の奨学金には雇用関係はありません。
つまり公的機関から奨学金を借りた場合は、どの病院で働いても返済条件が変わらないです。
途中で退職や転職することになっても、病院奨学金よりか不安要素は少なくなります。
病院から奨学金を借りるデメリット3つ
デメリット①就職先を選ぶ自由が制限される
病院から奨学金を借りるデメリット1つめは、就職先を選ぶ自由が制限されることです。
就職先を選ぶ自由が制限される理由は2つあります。
・奨学金を借りることや返済免除が先行するため自然と借りた病院に就職してしまうから
・他の病院比較やリサーチが不十分になるから
さきほど病院奨学金は雇用とセットとお伝えしました。
奨学金を借りることが就職内定と似た状況になるのです。
病院から就職内定をもらってしまったようなものなので、他の病院比較やリサーチをする必要がなくなります。
さらに返済免除が先行するため、返済のために働く意識も芽生えるのです。
大事なことはその病院で働きたい理由と目的です。
病院奨学金を借りるなら、その病院で働く理由と目的の事前リサーチを忘れずにしましょう。
デメリット②奨学生のときは職場の内情を知りづらい
病院奨学金を借りるデメリット2つめは、奨学生のときは職場の内情を知りづらいことです。
仮に奨学金を借りる以外にその病院で働く目的が明確にあったとしても、勤めつづけられる職場かどうかは就職してみてから分かるもの。
奨学生同士の交流会を開いてくれる病院もありますが、職場体験とは異なります。
繰り返しになりますが、奨学金を借りる前に病院の看護体験や職場見学へ参加してみましょう。
職場の内情すべてを理解しきれないとしても、雰囲気や働いている看護師たちの表情などから得られる情報があります。
一般的に転職が多いといわれる看護師です。
2021年 新卒看護師の離職率
https://www.nurse.or.jp/home/assets/20230301_nl04.pdf
10.3%(前年比2%up)
2022年度 病院看護実態調査
2023年3月31日 日本看護協会広報
働きつづけるためのマッチング項目は複数あります。
☐職場の人間関係
☐仕事のシステム
☐診療科とのマッチ
☐勤務時間との相性
☐給与と業務量の割合 など
新卒は出勤するだけでも大変な時期なので、合わない職場と分かってしまうと「返済を終える前に、心が終わる可能性」もあります。
心や体の健康を守るために「退職」を選ぶこともあるでしょう。
しかし気がついた時、すでに遅しなのが現実です。
それはなぜか、理由も確認しましょう。
デメリット③返済免除前に退職すると返済負担が生じる
病院奨学金を借りるデメリット3つめは、奨学金返済の免除前に退職すると返済負担が生じることです。
返済免除される前に退職するときは当然、退職と同時に返済しなければなりません。
この返済負担や返済条件は、病院によって異なるのです。
そこで、契約書類上に下記3つについてどのように記載されているかを確認しておきましょう。
①途中で退職するときの返済額
②返済方法
③違約金の加算有無
万が一、書かれていない場合は、契約を結ぶ前に病院へ問い合わせ必須です。
間違っても確認前に印鑑や同意サインをしてはいけません。
Q 過去に1年間、借りた分を今年4月1日~翌年3月31日の1年間かけて働き免除を受ける予定です。
返済免除されて退職できる時期はいつでしょうか?
A. 翌年4月1日以降に退職できます。
「借りた期間分を働くと返済が免除される制度」なので、1年と1日が過ぎていれば返済が免除され退職できます。
つまり最短で4月末日の退職になります。
ここまで耳が痛くなるような病院奨学金のデメリット情報が続きましたが、もちろんメリットもあります。
病院奨学金を借りるメリット3つ
病院奨学金を借りるメリットは下記3つです。
・働きたい病院から即内定をもらえる
・借りた期間 働いたら返さなくていい
・就職前から同期と交流できる
確実に内定をもらう方法としてその病院から奨学金を借りる手もあります。
就職前から同期と知り合えることもメリットと言えるでしょう。
個人的な主観ですが、就職する前から仲良くなっている奨学生同期を見ていて、心強いメリットだなと感じていました。
ここで視点を変えて、なぜ病院が奨学金を貸してくれるのか考えてみましょう。
奨学金を貸す病院のメリット
メリット①看護師人材を確保できる
奨学金を貸す病院のメリット1つめは、看護師人材を確保できることです。
慢性的な人手不足の看護師業界において、教育が必要な新卒看護師を確保できることは、人材の定着を図りやすい機会となります。
新卒看護師の採用は毎年4月が定例であることから、1年間の採用計画も立てやすいのです。
メリット②退職されても利益に繋がる仕組みがある
奨学金を貸す病院のメリット2つめは、退職されても利益に繋がる仕組みがあることです。
利益という表現はやや誇大かもしれませんが、違約金という仕組みを設けている病院奨学金もあります。
繰り返しになりますが、契約前に違約金や違約条件、退職時の断り書きなどを確認必須としましょう。
一方で病院奨学金を借りても大丈夫なパターンもあります。
病院奨学金を借りても大丈夫なパターン3つ
・就職先のリサーチが出来ている
・退職時の違約条件を確認できている
・就職先で働く目的・意志が強い
奨学金を貸してくれる病院のリサーチができていたり、その病院で働きたい目的が明確にあれば、就職後のギャップも少なく勤め続けられる可能性は上がるでしょう。
本記事のまとめ
病院から奨学金を借りることは、すなわち雇用とお金の契約が生まれるということ。
病院が奨学金を貸してくれる目的
・人材確保
・新卒看護師の定着
奨学金を貸す病院のメリット
・看護師人材を確保できる
・退職されても利益に繋がる仕組みがある
病院奨学金を借りるデメリット
・就職先を選ぶ自由が制限される
・奨学生のときは職場の内情を知りづらいこと
・返済免除前に退職すると返済負担が生じる
病院奨学金を借りるメリット
・働きたい病院から即内定をもらえる
・借りた期間 働いたら返さなくていい
・就職前から同期と交流できる
病院奨学金を借りても大丈夫なパターン
・就職先のリサーチが出来ている
・退職時の違約条件を確認できている
・就職先で働く目的・意志が強い
ここまで知っているとあなたも病院奨学金で損をしない看護学生になれます。
肩の荷を軽くしてから看護師を目指してくださいね。
応援しています。
fin.